TW2『シルバーレイン』、TW3『エンドブレイカー!』がメインのキャラブログ。
mauve:ゼニアオイ。花言葉は信念、母性愛/bixbite:紅色の宝石。石言葉は欲情を刺激 それぞれエストの誕生日の花と石。
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深い緋色の外套に身を包み。
街角のショーウインドーに自分を映して、短く切った髪をちょっと撫でた。
街角のショーウインドーに自分を映して、短く切った髪をちょっと撫でた。
エストは適当な喫茶店に入って、窓際の席に腰を下ろした。
注文したのは林檎のフレーバーを付けた紅茶と、数粒のダークチョコレート。
銀といえば聞こえはいいが、褪せた様な薄紫の髪。
深緋の目ばかり目立つ、どことなく幼い面差し。
どれも本当の自分だ、以前のような落ち着いた菫色の長い髪も年相応の顔も、染めたり化粧したりして作った偽りの自分でしかない。
アクスヘイムを離れて旅を続けてアクエリオまで到達した時は、思った。
もうここまで来れば自分がかつて使われていた暴力組織の者の目を欺く必要も無い、だから、自分を偽らなくてもと。
でも、皆が知っているのは今までの作った自分でしかなくて。
あの第二の故郷である斧の都で、何年もかけて作った『薬種問屋のお嬢さん』のメッキも、二年程でかなり剥がれた。
無論、薬師として、賢い女としての仕事は日々の糧であるし、その意味では以前と変わらないが。
祖母に仕込まれたもろもろの知識と立ち居い振る舞いは抜けない、というか自分の一部になっているけれども、
骨の髄までに染み込んでいる凶手としての目付きや、ふとしたときに放つ殺気のようなものを完全に覆い隠すには至らない。
変わりたいと思って、自分というものを知りたくて髪を切っても、過去からは逃げられない。
裏社会の端末として使われていたときの忌まわしい記憶が消えないように、悪夢に魘される度に脚の傷やその他諸々の小さな目立たない古傷たちが一斉に痛むように。
「……合わないわねぇ」
外套の内ポケットから取り出して手のひらに載せた、アメジストの髪飾り。
理屈で言えば深い色は今の褪せたような色でこそ映えるのだろうけども。
「短いし……」
貰った時は髪は菫色で、長かった。
でも、今はこんな変な銀色で、短くて。
長い菫色の髪の自分に贈られた物を、今の自分が付けていいものだろうかと、街角でしばし逡巡する。
ちなみに今は色味が装いに合いそうなカチューシャを適当に付けただけ。
おまたせしました、という店員の声すら上の空で、窓硝子に映る髪と髪飾りを見比べて、茫洋とした表情で紅茶を啜る。
私って、なんなんだろう。
甘いような苦いような粒を口に含んで、頬杖を突いて外を眺めながら。
窓の向こうを行き来する人々は、自分を偽らずに生きているのかしら?
自分というモノがなんなのか、迷わずに日々を過ごせるのかしら?
また、窓に映った自分の髪をもう一撫でして。
「本当に、なんなのよ。」
注文したのは林檎のフレーバーを付けた紅茶と、数粒のダークチョコレート。
銀といえば聞こえはいいが、褪せた様な薄紫の髪。
深緋の目ばかり目立つ、どことなく幼い面差し。
どれも本当の自分だ、以前のような落ち着いた菫色の長い髪も年相応の顔も、染めたり化粧したりして作った偽りの自分でしかない。
アクスヘイムを離れて旅を続けてアクエリオまで到達した時は、思った。
もうここまで来れば自分がかつて使われていた暴力組織の者の目を欺く必要も無い、だから、自分を偽らなくてもと。
でも、皆が知っているのは今までの作った自分でしかなくて。
あの第二の故郷である斧の都で、何年もかけて作った『薬種問屋のお嬢さん』のメッキも、二年程でかなり剥がれた。
無論、薬師として、賢い女としての仕事は日々の糧であるし、その意味では以前と変わらないが。
祖母に仕込まれたもろもろの知識と立ち居い振る舞いは抜けない、というか自分の一部になっているけれども、
骨の髄までに染み込んでいる凶手としての目付きや、ふとしたときに放つ殺気のようなものを完全に覆い隠すには至らない。
変わりたいと思って、自分というものを知りたくて髪を切っても、過去からは逃げられない。
裏社会の端末として使われていたときの忌まわしい記憶が消えないように、悪夢に魘される度に脚の傷やその他諸々の小さな目立たない古傷たちが一斉に痛むように。
「……合わないわねぇ」
外套の内ポケットから取り出して手のひらに載せた、アメジストの髪飾り。
理屈で言えば深い色は今の褪せたような色でこそ映えるのだろうけども。
「短いし……」
貰った時は髪は菫色で、長かった。
でも、今はこんな変な銀色で、短くて。
長い菫色の髪の自分に贈られた物を、今の自分が付けていいものだろうかと、街角でしばし逡巡する。
ちなみに今は色味が装いに合いそうなカチューシャを適当に付けただけ。
おまたせしました、という店員の声すら上の空で、窓硝子に映る髪と髪飾りを見比べて、茫洋とした表情で紅茶を啜る。
私って、なんなんだろう。
甘いような苦いような粒を口に含んで、頬杖を突いて外を眺めながら。
窓の向こうを行き来する人々は、自分を偽らずに生きているのかしら?
自分というモノがなんなのか、迷わずに日々を過ごせるのかしら?
また、窓に映った自分の髪をもう一撫でして。
「本当に、なんなのよ。」
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