TW2『シルバーレイン』、TW3『エンドブレイカー!』がメインのキャラブログ。
mauve:ゼニアオイ。花言葉は信念、母性愛/bixbite:紅色の宝石。石言葉は欲情を刺激 それぞれエストの誕生日の花と石。
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(ぱっつりと前髪を切りそろえた、長い黒髪の少女が目の前に行儀良く座っている。
切れ長の目元と彫りの深い顔立ちは、麗しいと言ってよいだろう。
その翡翠色の視線は、はっきりと前を見据えている。)
私が生まれたのは、檻の中でした。
切れ長の目元と彫りの深い顔立ちは、麗しいと言ってよいだろう。
その翡翠色の視線は、はっきりと前を見据えている。)
私が生まれたのは、檻の中でした。
私が生まれる前。
緩んだ世界結界と、それに伴った社会の混乱。
銀誓館の暗部が明るみに出るのと共に、一部の生徒は警察に追われ。
そして大多数の生徒は一般市民からも石持て追われる身となりました。
今も、同じですよね。
銀誓館の中は異能の子供達が強大な権力の庇護の下、楽しく過ごしていますけれど
一歩敷地の外へ出れば厳しいものや好奇の、そして畏怖の視線に晒される。
私の父は、 警察に追われる区分の者でした。
母は、何も関係が無かったのにその父に同行したが故に関与を疑われて、
いつしか自身も追われる身になったそうです。
自分から権力へ隷属、あるいは取り入る人もいたそうですが、
多くの能力者たちは山へ逃げ、離島へ逃げ。
もしくは各地を転々としたりして。
私が10歳になるまであったことの無かった兄は、そうやって逃げている間に生まれたのだと聞いています。
父はヤミ医者、母は内職をしながらまだ幼かった兄を育てていたそうです。
警察や諸々の追っ手をかわしつつ、異能の力を持っていることも隠しながら各地を逃げ回ったのだとか。
あの時が一番楽しく、幸せだったと後に兄は語ります。
兄が5歳か6歳の頃でしょうか。
野良猫親子が3匹、息を潜めるように暮らしていた、地方都市の繁華街の雑居ビルを
重装備の人たちが大勢で取り囲んで、一気に雪崩れ込んで来たそうです。
父のおそろしいまでに鮮やかな刃物捌きも、母の煌く氷雪地獄も虚しく、
敵を8割減らしたところで捕まってしまいました。
この時、母は身籠っていました。
私です。
兄はすぐさま両親と引き離され、政財界や軍事組織の思惑によって変えられてしまった銀誓館へ「保護」された。
私が兄と会うのはこの11年後。
私が10歳、兄が16歳になる時まで待たねばなりません。
父と母、厳重に力を封じられた上で対能力者用の収容施設へ入れられ、
半年程すると月満ちて私が生まれました。
この時だけは、隣り合っていて声も届くとはいえ別々の独房に入れられている両親が、
母が父の独房へ入るという形で面会が叶ったといいます。
子供の事は母親に任せようと思ったのか、お目こぼしを貰ったのか、はたまたなんなのか。
この後10年間、私はずっと母の元で育つ事ができました。
父については、壁越しに話しかけてくる以外にも
月に1度の「健康診断」の時、父の独房の中をちらりと見る事が叶っていたのですが
瞳の色以外は、鏡で見る自分によく似ているなと思っていました。
それにしても父はどれほど強かったのでしょうか。
何も知らぬ私の目にも、やりすぎではないかと思えるほどに拘束されていました。
私が10歳になったとき、「健康診断」で能力者としての覚醒の兆候が現れたので、
いつも抱きしめてくれていた母や、壁越しに話しかけてくれた父と引き離され、
高い壁に囲まれた銀誓館へ送られることとなり、そこで、生まれて始めて兄と対面しました。
母に良く似たかんばせと、母より大分濃い、深緑の髪に、うっすら緑がかった色味の薄い瞳の少年が、
自分の兄であるとはすんなり受け入れられませんでした。
兄の話は両親から聞かされていたものの、生まれてからこの方、兄など自分の空間には、いなかったのですから。
でも兄は、私に会える日を待ち望んでいたのです。
両親と離れ離れになる数日前に、自分が兄になるのだと教えられて、
生まれたはずの妹か弟と、きっと会えるはずなのだと。
数ヶ月もすれば、校舎と寮の往復、学業と修業の反復にも慣れてきましたが
慣れるにつれてこの環境の不自由さと、歪さに違和感を覚えました。
偉い人々は、私達を利用したいのだろうか。
もしかしたら、恐れている故に閉じ込めたいのだろうか。
その両方かもしれない。
6年ほど経った今でも、考えています。
………父と母の知らせは、その後、届いていません。
多分、元気で居ると信じています。
(少女は目を伏せ、大きく息を吐いた。)
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