振り向かない

「前を向くしか……ないじゃない……。進む以外の道は、無いの。」

自分で言うのも何だけれど、私、エスト・パシオンフローレはかなり前向きなのだろうと思う。
……生まれてから今日までの人生で、幸せとかそういうものを実感したことがないから、明日の未来へそれを期待するしかないだけなのだけど。
大多数の人なら、辛いことがあっても、酷い境遇でも、昔あった何かしらの幸せを思い出し、ほんの少しの癒しを得られるのだろうと思う。実際は知らない。
私にはそういう物がないから、未来へ明日へと逃げるように転がり込むしかない。

いつになったら、こんな薄暗くて居心地の悪い場所から抜け出せるのだろう。
死ねば楽になるのかもしれないけれど、生憎と生きることには人一倍執着心がある。


残念だけれど、しばらくはこの生暖かく気持ち悪い場所に居なくてはならないようだ。