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mauve:ゼニアオイ。花言葉は信念、母性愛/bixbite:紅色の宝石。石言葉は欲情を刺激 それぞれエストの誕生日の花と石。
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ひとを、ころした
いつものように胸を丸出しにしたような歌姫・舞姫の太鼓持ちで歌っていた夜、酒場のお開き後に組織でもそこそこの位置にいる者に呼ばれた。
私に人殺しをしてほしい、というのだ。もちろん、いきなりではない。
いつもの末端組織のおんぼろ長屋を出て3週間、貧乏大家族を装って(貧乏なのは確かで、性格には大家族を装った貧乏集団というべきか)いるうちに溜めた垢を徹底的にこそぎ落とされ、昼も夜も暗器の取り回しを教えられた。
もともと身軽な性質だったせいなのか、訓練は比較的すいすいと四肢に貼りついていった。
握る短剣の柄の感触も手に馴染んできた頃、ついに仕事に出された。
私が初めて殺した人間は、組織に楯突く貴族が囲い愛でている妾。
彼女が滞在する高級な宿に潜入し、殺して来いとのことだ。私には、その宿の下女が着る清潔で地味な制服が与えられた。ここの宿は子供もいい賃金で行儀見習いがてら働かせているので、紛れるのは容易だった。
件の部屋へ行き、ルームサービスを装って中に入る。
こちらを向かず、一心にドレッサーに向かう一人の女。鏡越しに見た彼女は、いかにも娼婦あがりという脱色した金髪に派手な化粧、牝牛のような胸とそれをさらに強調するドレスを纏っていた。
「こちらに飲み物をお置きします、マダム」
そう告げて手近な机へ盆を置く。そして、たっぷりした袖から短剣を取り出し、近づき…
「ちょっと!私はまだマドモアゼ……」
怒ったように声を荒げる派手な女。しかし、その主張は最後まで紡がれることはなく。
振り返ろうとした女の首にはぱっくりと開いた傷が。さらに胸にもう一刺し。
教えられたとおり、ここを刺せば殺せるところをちゃんと突いた。外へゴミを出すための滑り台へ飛び込もうと踵を返そうとした、が。
左の太ももの内側に痛みが走った。痛みが走っていった更に先を見れば、床に落ちた一本の簪。先端には血が付いている。
あの女が投げたものであるのは明白。だとすれば彼女はまだ息があるのか。
恐怖に囚われ、足がすくみそうだったし止めを刺したか確認したかったけれど、それ以上にここから生きて逃げたい思いが強くなり、わき目も振らずにその階の隅、部屋を出てすぐにある滑り台へ飛び込んだ。
生ゴミと紙まみれになった私を、ゴミ回収人を装った組織の者が待っていた。
後で手当てを受けた時、傷は浅いけれど肉を細かくギザギザに引き裂いたので跡が残るかもしれない、と告げられたけど、その時はどうでもいいことだった。
二日ほどして後、私は元のおんぼろ長屋に戻された。一ヶ月近くも顔を出さなかった私を、親代わり姉や兄代わりの下っ端の皆や、いつも顔を合わせる歌姫や舞姫たちは心から心配してくれた。
元気の無い私を女たちは皆気遣って、脱色した髪や大きな胸が殺した女を思い出させて、私は彼女らと目を合わせられなかった。
しばらくの間はいつものケチな盗みをして皆で楽しくおっかなく暮らしていたけれど、数ヵ月程してからまた殺すためにいつもの場所を離れた。
訓練を受けた所に着いてまず、それなりの長さまで伸ばしていた髪を短く切られた。
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