TW2『シルバーレイン』、TW3『エンドブレイカー!』がメインのキャラブログ。
mauve:ゼニアオイ。花言葉は信念、母性愛/bixbite:紅色の宝石。石言葉は欲情を刺激 それぞれエストの誕生日の花と石。
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襤褸切れにビーズを縫い付けたような子供。
下層での日常。
下層での日常。
酒場を覗き込めばそこはまるで酒池肉林。ただし、猥雑であって典雅さは殆ど無い。
【春は浮気の 春は浮気の花化粧 アクスヘイムは良いところ】
一段高くなった舞台の上。
華美な化粧をした黄色いドレスの女が舞う横で、白いワンピースを身につけて腰におまけ程度に黒いリボンを蝶々結びにしたエストリッドが歌い、鈴を鳴らす。
闊達で色気満点の舞踊が一段落したすぐ後で、舞姫が小さな太鼓持ちに話しかけてきた。
「ねえ、エストリッドちゃん。あなたも真ん中で歌ってみない?」
「私小さいし、お客さんにも見えないよ。」
何より、自分が目立つのが嫌なのだ。
それにこんなイワシの骨みたいな子供が歌ったところで誰も喜ばないだろう。
「お願いよ……お姉ちゃん、お化粧も付け睫毛も取れてきちゃったし、他にも芸の出来る人が今日はもう居ないの。ね?お願い……」
あまりにも懇願されるので、じゃあ一度くらいならいいだろうかとちょっと興味が出て、
舞姫が裏で化粧を直している間に少しだけ、舞台の中央に立って見ることにした。
ずっと酒場で聞いているうちに覚えた艶歌を、鈴を連ねた腕輪の伴奏で歌ってみる。
甘く舌足らずなのに、どこかませた響き。
巧みな節回しでも大人びた音程でもないのに、酒場の大人達は妙な気分を覚えてきた。
ましてや、
【夢に見るよじゃ惚れよがうすい 真に惚れたら眠られぬ
飲んで忘れるつもりの酒が 想い募らす春の雨】
などと、抑揚を付けて都々逸を歌い上げれば、酒場の大人の半分はぎょっとした目つきで小さな歌い手を凝視する。
あと5年、いや6年もしたらこの子供はどんな娘に育つのだろうか。大人たち、特に男はそのような想いを禁じえないのであった。
「エストリッドちゃーん、ありがとー。お姉ちゃん戻ったよー♪」
白粉を付け直し、付け睫毛もバッチリ決めた舞姫が、お礼のお菓子と3ダルクをエストリッドに手渡す。
「わーい、お姉ちゃんありがとう!」
歌をやめた途端に無邪気な子供の表情を取り戻したエストリッドは、だんだん眠くなってきた目をこすりながら鈴を鳴らして調子をとる仕事に戻るのだった。
「私、歌も練習してみようかな?歌ってお菓子が貰えればいいなぁー」
街の楽器屋で見かけた、愛らしいデザインの竪琴の値段に涙を飲みつつ、壊れた窓枠に丈夫な糸を張って即席の竪琴を作ってみるのは、この数日後である。
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