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TW2『シルバーレイン』、TW3『エンドブレイカー!』がメインのキャラブログ。 mauve:ゼニアオイ。花言葉は信念、母性愛/bixbite:紅色の宝石。石言葉は欲情を刺激  それぞれエストの誕生日の花と石。
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乗鞍岳の麓にある森に立つ、一軒の洋館。
その裏庭に咲く野薔薇がいやに鮮やかなピンク色をしているのは、何故なのだろうか。
錆青磁の髪と翡翠色の目をした娘が、その根元へ問いかける。





 




桜庭・都夜子は、罪深き美女であった。
酷薄そうな薄い唇には鮮やかな紅を引き、長くうねった赤毛と発達した胸と腰の女である。
これで、大学の助教授であるというのだから信じられない。
その上に本物の魔女、ヤドリギに祈りを捧ぐ女祭司でもある。
いかにもファム・ファタールであると主張するような容姿に相応しく、奔放な恋を重ねる日々を送っていた。
満開の桜の木の根元へ、花びらが積み重なるが如く、
一夜の恋という名の花びらが散れども、いつかその恋は実を結ぶように。
アバンチュールの結果として、美女の腹は月を重ねる毎に大きくなることとなる。
……どの学部の教授が父親だ、いや、あの凛々しい市議会議員が父親だ、
いや魔女のような空気を纏い、真に魔女のような助教授がホムンクルスをその身に宿したのだと。
口さがない学生達は、暫くのあいだ話の種、酒の肴にしていた。


ところ変わって、こちらはイギリス。
「そのような娘を娶って何になるというのだ?帝国が滅びてからも繋ぎ続けてきた子爵家の血筋。
 爵位が無いどころか、賤しき狼どもに加担する魔女を妻にするなど、絶対に許さんぞ!」
怒りを顕にする貴種ヴァンパイアの紳士。
それに相対するはまだ若く、優男と言っても良い青年で、
その後ろには翡翠色の瞳の娘が伏し目がちに庇われている。
「ごめんなさい……私が間違っていたの。」
プラチナブロンドの髪と、色彩を同じくする長い睫毛を涙で光らせる、楚々とした乙女。
「一人でも、ううん、二人で生きていけるから、ニカは幸せになってね。」
まだ目立たない下腹部を撫でながら、恋人を愛称で呼ぶ。
もともとが無理な恋。
でも、その結果はきっとアンジェこと、アンジェリカ・マクガフィンには充分過ぎる実りだと思えた。
引き裂こう、別れさせようとする人々の意に反し、ニコライ・グラジエフの決意は既に固まっていた。
「……いいや、二人で育てるんだ。小さなペトルーシュカか、ベアトリスを。」
ニカとアンジェは、名前の意味を探したり、数秘術にあやかったりもして、
生まれてくる子の名前は男のものと女のものを既に決めていた。
その後、1時間も罵倒し続けても頑として決意を曲げない跡取り息子を見て、子爵は大きく息を吐き
「もうどうとでもしろ。爵位はやらん。何があっても私は関知をしないからな。」

これが父と息子の最後の会話。
そして、1年後には息子夫妻の死に関しても本当に関知をせず、
生まれてすぐに息子は手紙と写真を送ってきたにもかかわらず、
生後数ヶ月もしない孫娘の存在すら完全に忘れていた。
20年後、孫が少なく、政略結婚の鉄砲玉に困った子爵がこの孫娘の存在を思い出していれば
まだ少しは子爵家の趨勢もマシなものになっていたのかもしれないが、
悲しいかな、不肖の長男の存在と共にその妻も孫娘のことも
綺麗さっぱり忘れ去っていたので、結局子爵家は没落することとなった。



罪深き美女たる都夜子が、生まれて間もない愛娘を亡くした。
原因は分からないが、それ故に美しい魔女は森の奥へ買った別荘に引き籠り、
乾き果て、悪臭すら失せた赤子の亡骸だけを慈しみ、全てを憎む日々を過ごす。
見るに見かねた姉を見て、姉に似た容貌の弟―この辺一帯の地主の家へ婿入りをしていた―
が、女の赤ん坊を連れてやってきた。
遠い北西の島国で生まれた赤子の名は、ベアトリス・アンジェリカ・マクガフィンと言った。

ベアトリスが日本にまで来たいきさつを、弟がかいつまんで説明をした。
遠縁の若夫婦が駆け落ちをし、子供が生まれた。
そこまでは良かったものの、ゴーストに襲われて若夫婦は相討ちに、生まれて間もない娘だけが遺される。
金銭的に裕福な父方からは、引き取りを拒否されるどころか丸っきり無視された。
母方、ようするにイギリスやアイルランドに住んでいる自分達の親戚には
ケルトの血が災いしているのか、それとも運が悪かったのか、子供を引き取る余裕が無い家庭ばかりで、
たらい回しになった挙句に日本にまでやってきたのだと。
亡くした娘の感触をまだ覚えている腕で、恐る恐るその遠縁の娘を抱きかかえてみる都夜子。
死んだ子を抱きかかえ続けてきたその手で、今度は生きている子を抱くという、運命の糸の導き。
パッと弾けるように笑うその子を見て、魔女は、その運命を信じて決意をする。

「助教授はやめる。この森で、私がこの子を育てるわ。……死んだあの子の代わりに。」
魔女の腕に抱かれていた赤子の亡骸は、彼女が丹精している庭へと葬られ、
その行政的な身分にベアトリスが滑り込む。
都夜子は宣言どおりに職を辞し、空気も霧も清らかな森で、一人娘を清らかに育てた。
娘だけは清らかには育てたものの、娘が小学校に上がることになると気が緩んだのか
また奔放にアバンチュールを重ねることになるが。

名前の通りに緋色の髪をして、ハシバミ色の目をした桜庭緋紗子はどこにもその痕跡を残すことなく、消えた。
居るのは、錆青磁の髪に翡翠色の瞳、抜けるように白い肌の妖精のみ。








妖精が、野薔薇へ問いかける。
「今、どんな気持ちですか?ほんとうの、ひさこ、ちゃん?」
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