TW2『シルバーレイン』、TW3『エンドブレイカー!』がメインのキャラブログ。
mauve:ゼニアオイ。花言葉は信念、母性愛/bixbite:紅色の宝石。石言葉は欲情を刺激 それぞれエストの誕生日の花と石。
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義理の祖母のところで暮らし始めたエスト。おつかいの話
13か、14。
それくらいに見える少女が、アクスヘイムの街中を歩く。
すみれ色の髪を肩で切り揃えて、ガラス玉のヘアピンを飾っている。
瞳は、おっとりとした中に溌剌さを含んだ赤。
白い麻の布に、赤い糸で裾や袖に細かい刺繍を施したチュニックに、揃いのスカートでちょっとしたおしゃれ。
少し不釣合いな程に大きな籠を腕にかけ、歓楽街へ向かって歩いてゆく。
「バーシャの使いで来ました。孫のエストです。」
化粧品を卸している娼館の勝手口に回り、祖母が懇意にしているという女将に品物を渡す。
「ああ、最近遠方から引き取ったお孫さんね。ちょっと待ってなね。」
刻は夕方。
娼館がそろそろ開く時間であり、女将はジュースの入ったグラスと幾つかのお菓子を小さな使者に渡すと、慌しく表へ駆けていってしまった。
白粉、口紅、化粧水、クリーム。
どれも身近に接しているものの、エストリッド―いや、エスト自身にはとんと縁の無いものばかりである。
(いつか、私も使うのかな?)
勝手口近くの机にそれらを並べ、椅子に掛けながら、女将の出してくれたジュースを飲んでいるうちに、女将が戻ってきた。
「エストちゃん。おばあちゃんにこのお手紙を持って行ってくれるかい?はい、そのお駄賃。」
10ダルク程の小銭と共に手に乗せられたのは、1通の依頼書。
その内容が何なのかは、まだまだ心も身体も子供のエストには分からない。
「うん、おばさんありがとう。また明後日来ます。」
気が付けば辺りはすっかり日が落ちている。
歓楽街を抜け出て、如何にも中層らしい居住区域へ。
ドロースピカの光の近くで、泥団子を作って遊んでいる子供たちの近くを通り過ぎようとした時、何かがエストの身体に当たった。
当たった部分を触ると、妙にざらついている。
泥だ。
「あの姉ちゃん、子流し婆の孫なんだぜ!」
大きな声で子供が叫ぶ。
「子流し婆って何だー?」
「しっらねー!でも、怖くてヤバいババアだとか母ちゃんが言ってた!」
「魔女なんじゃねー!?」
こながしばば、聞いたことの無い単語だとエストは困惑した。
こ、とは何だろう。粉菓子?違う。流す?流すのか?
「ばーちゃんが魔女なら孫も魔女なのか?」
「しっらねー!」
状況が全く飲み込めないが、目の前で交わされる会話に嫌な気配を感じたエストは、一目散に家へ走り出した。
チュニックが泥だらけになってしまっていることに気づくのは、家に入ってからである。
依頼書の中身と、子流し婆の意味を知るのは、エスト自身が女としての徴を見た後、2年ほど先になる。
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